上映作品 - コンペティション

ものがたり / Gu Shi

アメリカ、香港、タイ / 2026 / 83分
監督:エイミー・ソン 宋一楠(Amie SONG)

両親と娘、息子の4人家族が、迫りくる危機を逃れて、海と森の間の一軒家にたどり着く。幼い息子は事故で寝たきりになり、家族は聞く者の記憶を密かに消し去る物語を繰り返し語って聞かせる。一方、悪夢に悩まされる娘は、失われた幼少期の記憶がこの家や夢に出てくる緑のドレスの少女と関係あるのではないかと気づく。

海と森の間に位置する人里離れた一軒家へ、追われるように避難してきた4人家族。そこは守られているような安心感と、どこか不穏な空気が同居する場所で、彼らはやがて奇妙な「狭間」のような状態に囚われていく…。本作はコロンビア大学で学び、短編作品で国際的な評価を得てきたエイミー・ソン監督の長編デビュー作。ヴェネツィア・ビエンナーレによる映画製作支援プログラム「ビエンナーレ・カレッジ・シネマ」の助成によって製作され、エグゼクティブ・プロデューサーとして、タイの異才アノーチャ・スウィーチャーゴーンポンが参加している。『刻舟求剣』や『精衛填海』といった中国の故事を援用しつつ、家族内の沈黙と記憶の忘却のプロセスが象徴的に描かれていく。家という閉ざされた空間と森という舞台の対比も見事で、細やかに設計された音響と画面構成が静謐な緊張感を醸し出し、家庭という最小単位の共同体が持つ政治的なメタファーを鮮烈に浮かび上がらせる。ヴェネツィア映画祭でプレミア上映後、釜山映画祭でも上映された。

監督:エイミー・ソン 宋一楠(Amie SONG)

中国・山西省太原生まれ。コロンビア大学大学院で映画演出を学び、ニューヨークと中国を拠点に活動する。短編『Three』(2024)がカンヌ国際映画祭のLa Cinef部門に選ばれ、世界の50以上の映画祭でも上映される。2025年には釜山国際映画祭のアジア映画アカデミーの監督フェローに選出。同年、ヴェネツィアビエンナーレの若手映画作家育成プロジェクトであるビエンナーレ・カレッジ・シネマに中国語圏監督として初めて選ばれ、長編デビュー作となる本作を製作した。