上映作品 - コンペティション

リモート / The Remotes

フィリピン / 2026 / 153分
監督:ジョン・トーレス(John TORRES)

行政機能が半ば崩壊したマニラ郊外の島で、交通事故が多発する。愛妻が事故死し悲嘆にくれる刑事ミハレスは、退職目前に一連の事故の捜査を命じられ、危険運転者を「再教育」する音声アプリが共通項だと知る。悲嘆ホットラインの会話を元に開発された穏やかな音声が暴走を招いたのか。ミハレスは音声を提供した姉妹を追う。

フィリピン映画界の鬼才ジョン・トーレスの初の長編劇映画は、テクノロジーと人間の意識の境界を探求するネオ・ノワール作品だ。物語の軸となるのは、連続する不審な交通事故と、その背後にあるナビゲーション・アプリ「Eva」の真相を追う一人の刑事。映画はクラシックなノワールの探偵劇の骨組みをかろうじて保ちつつ、テクノロジーが現代人の肉体や精神を侵食していく不気味な現実を徐々に浮き彫りにしていく。自由意志を手放し、他者の声に従って行動することへの恐怖と奇妙な快楽。その背反する深層心理を通じて描かれるのは、デジタル環境下における自我の不確かさと人間存在の揺らぎだ。常に真夜中のような色調を保った映像と静謐で精緻な音響演出は、視覚と聴覚を心地よく揺さぶり、私たち鑑賞者を主人公とともに深い迷宮へと迷い込ませるだろう。トロント映画祭でワールドプレミア上映後、ニューヨーク映画祭等でも上映された。

監督:ジョン・トーレス(John TORRES)

1975年、マニラ生まれ。独学で映像制作を始め、アテネオ・デ・マニラ大学で教鞭を執りながらオルタナティヴな映画・アートスペースを共同運営し、ミュージシャンとしても活動。初長編『Todo Todo Teros』(2006)がバンクーバー国際映画祭のDragons & Tigers Award (最優秀アジア映画賞)。日常の記録やアーカイブ素材をコラージュするなどの実験的作品を多数発表し、ラヴ・ディアスらとともに2000年代のフィリピンニューウェーブを牽引する。本作が初の本格的な劇映画。