











イラン、スイス、イタリア、カナダ、トルコ / 2026 / 87分
監督:アリ・アスガリ(Ali ASGARI)
テヘランの医師が、負傷した抗議デモ参加者を治療したために逮捕される。医師免許を剥奪されたうえ診療所も閉鎖に追い込まれ、失意の底に突き落とされた医師は、自らの命を絶とうと決意する。「最後の一日」に母や妹弟らを訪ねて回り、自分の旅立ちに備えさせようとするが、思いもかけない出来事が彼の決意を揺るがす。
深刻な社会情勢と不条理に直面する現代のテヘランを舞台に、深い絶望から微かな希望を見出す人間の姿を静謐に描き出した端正なドラマ。抗議者を治療したことで医師免許を剥奪された主人公が自殺する決意を固め、「最後の1日」に年老いた母親や兄弟たちを訪ね歩く過程を追う。無駄のない脚本と慎み深い演出、そして主演のミシャク・ザラをはじめとする俳優たちの力みのない演技が無理なく調和し、イラン社会の緊迫感とそこに暮らす人々の人間味溢れる息遣いが多層的に捉えられている。絶望の深淵にありながらもふとした瞬間に滲み出るささやかな可笑しさや、家族と過ごす穏やかな時間が重なることで、タイトルが示唆する通り、暗闇のなかに一筋の微かな光が立ち現れる様は感動的だ。今年1月の反政府デモ弾圧の直後にテヘランで撮影開始、2月にイスラエルと米国が戦争を開始し監督の自宅付近にも着弾したため、イスタンブールに移動して屋内シーンを撮影した。ヴェネツィア映画祭のコンペティション部門でワールドプレミア上映された。

監督:アリ・アスガリ(Ali ASGARI)
1982年、テヘラン生まれ。イタリアで映画を学ぶ。初長編『Disappearance』(2017)がヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門、続く『Until Tomorrow』(2022)はベルリン国際映画祭パノラマ部門に選出。アリレザ・ハータミーと共同監督した『Terrestrial Verses』(2023)はカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で上映。前作『Divine Comedy』(2025)は再びヴェネチアのオリゾンティ部門に選出され、フリブール国際映画祭でグランプリを受賞。本作が長編第6作。