上映作品 - コンペティション

嘘の生活 / Big Little Things

香港、アメリカ / 2026 / 110分
監督:ミシェル・ジョウ 周彤(Michelle Zhou)

旧正月で北京から故郷ハルビンの実家に帰省することになったレイ。結婚を迫る母に同性の恋人ベイの存在を隠すため、彼女は「恋人」役の青年を雇って連れて帰る。計画は順調に進んだかに思えたが、演技と現実の境界が曖昧になり、レイは自らのアイデンティティが揺らぐのを感じる。そこに、ベイが突然現れる。

中国の大学を中退し、創作の場を求めて米国に渡った女性監督が同名短編を経て完成させたデビュー作。監督自身とパートナー(本作の製作者)の体験を元に、同性愛者だと親に明かせない主人公の苦い帰郷の日々を追う。親を思って偽の恋人を仕立てる設定はアン・リーの『ウェディング・バンケット』(1993)にも通じる定番だが、本作の白眉はその先。自己増殖する嘘、沈黙の下に隠れた真実を、きわめて抑制されたタッチで丹念に描く。「よき娘」と「本当の自分」の間で苦しむ主人公と、家族への献身ゆえに娘を追い詰めてしまう母親の確執はとりわけスリリング。監督の故郷ハルビンの凍てつく風景も深い感興をもたらす。中国ではLGBTQ∔映画は事実上の禁止状態にあるが、製作陣は中国系企業の資金を一切受けずにこの企画に挑んだ。娘を遠巻きに見守る父親役は、製作者の実父が演じている。ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門でワールドプレミア。金馬奨では新人監督賞、脚色賞、主演・助演女優賞の4部門にノミネートされた。

監督:ミシェル・ジョウ 周彤(Michelle Zhou)

1990年ハルビン生まれ。中央戯劇学院を中退し、2011年に渡米し映画を学ぶ。短編、ミュージックビデオ、広告に携わり、短編『Fish Eye』(2015)でUSAフィルム・フェスティバルの最優秀短編賞を受賞。初の長編脚本『Under The Snow』が2020年サンダンス・インスティテュート脚本家ラボのセミファイナリストに。長編監督デビュー作の本作は、ウディネ極東映画祭や台北金馬創投会議の企画支援プログラムに選ばれ、金馬創投ではマーケット・ポテンシャル賞を受賞した。