上映作品 - コンペティション

燃える巨神 / The Burning Giants

タイ、シンガポール、フランス、オランダ / 2026 / 118分
監督:プッティポン・アルンペン(Phuttiphong AROONPHENG)

ジャングルの奥深くから謎の白い煙が広がり、触れた者は「見えない火」に焼かれたような火傷や発疹に侵される。政府は封じ込めを名目に森林を封鎖し、カレン族の住民を都市へ強制移住させる。森で捕まった青年ヤクが隔離施設へ移送されるなか、彼を拘束した若い警察官ラクは組織の行動に疑問を抱き始める。

タイ西部の森林地帯を覆う正体不明の煙と不可解な奇病。『マンタレイ』(2018年/第19回東京フィルメックスで上映)で鮮烈な長編監督デビューを飾ったプッティポン・アルンペンの3作目の長編となる本作は、先住民カレン族の奪われた土地と、消し去られた歴史を巡る記憶を、現実と幻想の境界をシームレスに横断しながら描く意欲作だ。物語の軸となるのは、国家の強権的な立ち退き工作により分断されてしまった一組の夫婦。夫との再会と失われゆく故郷への帰還を切望し、妻は行動を起こしていく。その一方、画面を覆う霧や煙の向こう側の森の奥深くには、残された廃劇場があり、そこは神話世界の巨鬼たちの亡霊と現代の難民たちの記憶が重なり合う幻想的な舞台となっている。土地と尊厳を奪われた人々の痛みを、流れるようなカメラワークで神話の世界と接続し、スクリーン上に可視化してみせる手腕と胆力には驚くほかない。ヴェネツィア映画祭のオリゾンティ部門でワールドプレミア上映された。

監督:プッティポン・アルンペン(Phuttiphong AROONPHENG)

1976年バンコク生まれ。シラパコーン大学で美術を学ぶ。撮影監督として活動する一方、短編を多数発表し、釜山、ロッテルダム、ハンブルグ、など多数の国際映画祭で選出される。ロヒンギャ難民問題を背景にした長編監督デビュー作『マンタレイ』(2018)でヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門最優秀作品賞を受賞。第19回東京フィルメックスのコンペティションでも上映された。続く『Morrison』(2023)は釜山国際映画祭で上映。本作が長編監督第3作となる。