11月29日(土)17:20 -朝日






©Floating Light (Foshan) Film and Culture Co.Ltd
中国 / 2025 / 129分 /
監督:フオ・モン(HUO Meng)
1991年の中国。家族の中で3番目に生まれたチュアンは、両親が村を離れ、南部の都市深圳へ仕事を求めて兄姉を連れて行くことにした時、唯一取り残されることになった。別の村の親戚のもとに預けられ、そこで元の苗字のまま生活している彼は、村に完全な帰属意識を持つことはできなかったが、それでも曾祖母や叔母の寵愛を受けながら日々の生活を送っている。
本作では春から冬にかけての農村での人々の生活が、辛抱強く、偏見のない観察的な視点で描かれていく。1991年当時の中国は工業化の瀬戸際にあったが、主人公の少年の暮らす農村には電話も近代的な農業機械もなく、村民たちは外界からほぼ隔絶された状態にある。物語は筋書きよりも、葬儀や結婚式といった人生における大きな出来事によって展開されていく。登場人物たちはそれらの出来事に巻き込まれ、彼らが望むと望まざるとに関わらず、不確かな未来へと導かれる。その過程で、健全なものもそうでないものも含め、彼らがどのように物事を受け止め、重労働から政治的抑圧に至るまでの苦難にいかに対処し続けているのかが明らかにされていく。ありふれた人間ドラマでありながら、季節が移り、人生が続いていく中で、両親や上の世代の辛苦を新しい世代がどう受け継ぐのかという問いに、抵抗と絶望の間で揺れ動きつつも、この作品は真摯に向き合っている。ベルリン国際映画祭のコンペティション部門でワールドプレミア上映され、銀熊賞(監督賞)を受賞した。

監督:フオ・モン(HUO Meng)
霍猛。1984年河南省生まれ。中国伝媒大学で法律を学び、同大学院で映画の修士号を取得。『My Best Friends(我的狐朋狗友) 』(2016)で監督デビュー。『Crossing The Border-Zhaoguan(過昭関)』(2019)が平遥映画祭で監督賞、男優賞など3冠、北京青年映画祭で作品賞、イランのファジル映画祭で最優秀アジア監督賞を受賞した。
本作『大地に生きる』は、この歴史的転換期が中国の人々の伝統や感情、そして人間関係に与えた深い影響を描いています。止めようのない風のように、その変化は生活のあらゆる側面を席巻していきました。
物語の舞台は1991年の中国農村。作品に流れる物語と感情は、何世紀にもわたる歴史・文化・伝統に根ざしながら、同時に現代中国社会の意識も反映しています。
集団主義的な社会政策が何千年にも渡って築かれてきた伝統と衝突したとき、人々がいかにして自らの生き方そのものに挑戦するような適応を強いられたのか。それを私は描きたかったのです。また、女性たちが社会的・肉体的に直面してきた大きな重圧が、長く、時に取り返しのつかない傷を残したことを描くことも重要だと考えました。これらは非常に大きなテーマですが、ひとつの家族の個人的な物語の中に凝縮されています。
撮影監督の郭達明と私は、映像言語の役割を非常に重視しました。私たちが目指したのは、純粋に写実主義や自然主義に縛られるのではなく、現代的な感覚を持つ映画であることでした。物語を支えつつ雰囲気を作り、私自身の視点や考え方をどう作品に取り込むかについて、撮影中は常に議論を重ねました。ロングショット、トラッキングショット、そして精緻な構図による画面づくりは、そのための手法となりました。また、作曲家のWan JianguoやサウンドエディターのLi Taoと協力し、豊かで多層的な音響デザインを構築することも、作品の質感を形づくる上で重要でした。
撮影は一年間に渡り、自然の四季の移ろいを追いかけながら行いました。これは、伝統的な農村の自給自足的生活や、自然との深く循環的な繋がりを際立たせるためです。映画の中で観客は、人々が自ら食料を育て、大地から家を建て、そして綿を栽培して布団や衣服を縫う姿を目にするでしょう。文字で描写するとシンプルですが、それをスクリーンに立ち上げるには綿密な計画と実行が必要でした。
四季を通じて撮影し、四世代にまたがる物語を織り込むことで、私たちは「生きること」「存在すること」「時間の移ろい」といった大きなテーマが展開し、同時に観客の解釈の余地も残す、広がりのある没入的な世界を構築することができました。
そして何よりも、この映画に命を吹き込んでくれたキャストに深く感謝しています。彼らの多くは日常生活の中で大きな重圧を抱えており、そのため一見すると無関心や感情を抑えた印象を与えることがあります。しかし撮影の場では、それぞれの役者たちは自身の経験を役に注ぎ込み、役柄と継ぎ目なく融合しました。彼らの演技は、単なる架空の描写ではなく、深く個人的な、複雑な感情の風景、つまり、そうでなければ隠されてしまうかもしれない感情の層を露わにします。そのことは私に、どれほど苛酷な体制のもとでも、人は本能的に芸術と表現を求める存在であるということを再確認させてくれました。おばあちゃんのGuilanを演じた张彦荣が、撮影の最後に私に言った言葉を私は決して忘れないでしょう。「孟さん、ありがとう。これからは自分の人生を生きていきたい。」
11月29日(土)17:20 -
有楽町朝日ホール