東京フィルメックス関連企画
マノエル・ド・オリヴェイラ監督作品セレクション
Manoel de Oliveira

11/13-15の関連企画プログラムのチケット・入場方法はアテネ・フランセ文化センターのHPをご確認ください。

日程:2025年11月13日(木)―11月15日(土)
会場:アテネ・フランセ文化センター(東京・御茶ノ水)

巨匠マノエル・ド・オリヴェイラ
没後10年
鑑賞機会の限られてきた
長短編6作品を厳選して上映

ポルトガル映画の巨匠マノエル・ド・オリヴェイラが世を去って10年。
その作品群は世界映画史の中で特異な輝きを放ち続けおり、その全貌は捉えられていない。
数あるオリヴェイラ映画の中から、日本において鑑賞機会の少ない作品を厳選して特集。
処女作『ドウロ河』(1931)と実質的な遺作『レステロの老人』(2014)。独裁政権期をまたいで制作された「挫折した愛4部作」の第1作『過去と現在』(1972)と第4作『フランシスカ』(1981)。オリヴェイラ映画のテーマのひとつ「演劇の上演の映画」の最初の試み『春の劇』(1963)。日本では19 年ぶりとなる『言葉とユートピア』(2000)をプログラミング。オリヴェイラ再考の機会としたい。

ドウロ河 / Douro, Faina Fluvial

ポルトガル / 1931 / 21分 /
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ

マノエル・ド・オリヴェイラの初監督作。ヴァルター・ルットマンの『伯林 大都会交響楽』に影響を受け、彼の故郷であるポルトとその主要河川であるドウロ川沿いで営まれる労働と産業を描く。1931年9月19日、リスボンで開催された国際映画批評家会議で初上映されたが、ポルトガル人観客から「過酷な労働と貧しい人々を見世物にする」とブーイングを浴びた。しかし、出席していたルイジ・ピランデッロらは絶賛。後に共同監督作『En une poignée de mains amies』(1997)を制作したジャン・ルーシュは本作が生まれて初めて見たドキュメンタリーの一つだったと述べている。

春の劇 / Acto de Primavera

ポルトガル / 1963 / 91分 /
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ

ポルトガル西部の小さな村クラリャの住民たちには、毎年春の祭で16世紀頃のテキストに基づくイエスの受難劇を演じる習慣があり、住民たちが聖書の登場人物たちを演じるという形でコミュニティの生活において重要な役割を担っていた。オリヴェイラはこの劇のドキュメンタリーを撮影することから始め、やがてフィクションへと向かった。オリヴェイラ自身が制作・監督・脚本・撮影・編集を担当している。この作品の助手だったアントニオ・レイスはこの近隣で『トラス・オス・モンテス』を撮った。ジョアン・ボテリョは自作『O Cinema, Manoel de Oliveira, e Eu』で「ジャン=マリー・ストローブはこの映画を見て苛ついていた。彼がやったことを先取りしていたからだ」と語っている。

過去と現在ー昔の恋、今の恋 / O Passado e o Presente

ポルトガル / 1972 / 115分 /
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ

オリヴェイラによる「挫折した愛」4部作の最初の作品。亡き夫リカルドへの愛を募らせる妻ヴァンダに耐えかねて新しい夫フィルミーノが自殺する。するとリカルドの双子の弟ダニエルが現れて、自分こそが本当のリカルドで、死んだのは弟の方だと告白する。しかしヴァンダは「生き返った」リカルドを前にすると、今度は死んだフィルミーノへの愛を募らせていく。「『過去と現在』について今言えることは、62歳にして最も若いポルトガル映画監督が、彼の最高にして最も知的な映画を作ったということ以外にない」(ジョアン=セーザル・モンテイロ)

フランシスカ / Francisca

ポルトガル / 1981 / 166分 /
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ

「挫折した愛」の第4作。『アブラハム渓谷』の脚本家アグスティーナ・ベッサ=ルイスの小説「ファニー・オーウェン」をオリヴェイラ自身が脚本を書いて映画化。前作カミーロ=カステル・ブランコを語り手に貴族ジョゼ・アウグストの異常な愛を描く本作品は、撮影監督であるマリオ・バローゾが主演者の一人カミーロを演じており、後にカミーロの最期を描く『絶望の日』でも撮影=主演として参加している。本作はカメラに向かって話すなどの「上演の映画」の特徴のほかに、ブニュエルやベルイマン『ペルソナ』を思わせる反復や、黒澤明の『羅生門』を思わせる技法で撮った森の馬の疾走シーンなど、随所に時の感覚を壊そうとする演出も散見される。

言葉とユートピア / Palavra e Utopia

イタリア、スペイン、フランス、ブラジル、ポルトガル / 2000 / 130分 /
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ

詩人フェルナンド・ペソアに「ポルトガル語の皇帝」と呼ばれた17世紀の神父アントニオ・ヴィエイラは、ブラジルで青年期を過ごし、国王ジョアン4世と親しかったが、異端審問にかけられ、それでもなおブラジルでのインディオの奴隷解放を訴えたが、新国王ドン・ペドロに疎まれブラジルに去る。オリヴェイラにとって初のブラジルロケ作品でもあり、「重要なのは、人道主義者としてのヴィエイラの人と言葉を三人の俳優の肉体を通して高め浮き彫りにすること」だったと言う。言葉に聞き惚れるほどの長い説教シーンが圧巻だが、ルイス・ミゲル・シントラと並んで晩年のヴィエイラを演じるブラジルの名優リマ・デュアルチは「ヴィエイラはブラジルのポルトガル語の官能性を擁護していた」と述べている。

レステロの老人 / O Velho do Restelo

ポルトガル、フランス / 2014 / 19分 /
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ

オリヴェイラの遺作の一つである短編。作家カミーロ=カステロ・ブランコ(マリオ・バローゾ)、詩人ルイス・ヴァス・ド・カモンイス(ルイス・ミゲル・シントラ)、セルバンテスの小説の主人公ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ(リカルド・トレパ)、詩人テイシェイラ・ド・パスコエス(ディオゴ・ドリア)という4人が、ポルトの河口にある庭園で、ポルトガルの過去と未来について議論を交わす。タイトルはカモンイスの「ウズ・ルジアダス」の中で登場する、大航海時代の失敗を警告する老人のこと。途中に『ノン、あるいは支配の虚しい栄光』『絶望の日』『破滅の恋』などのオリヴェイラ作品や、グリゴリー・コージンツェフ監督『ドン・キホーテ』の抜粋が挿入されている。

監督:マノエル・ド・オリヴェイラ (Manoel de Oliveira)

1908年12月11日、ポルトガル北西部のポルト生まれ。高校時代に映画好きとなり、特にF.W.ムルナウ『サンライズ』のカット割りを記憶するほど熱中する。リーノ・ルーポの俳優養成所に入学するが、一方で1931年に父親の援助で監督第1作『ドウロ河』を撮り、1942年には初の劇場用長篇映画『アニキ・ボボ』を発表。家業の傍らで映画制作を続け、約20年ぶりに長篇第2作となる『春の劇』(63)を公開するも、「ポルトガルには検閲が存在する」という発言によって独裁政権下で投獄される。その後10年近くを経た1972年の長篇第3作『過去と現在―昔の恋、今の恋』で本格的な制作活動を再開。1974年の独裁政権終焉をまたいで制作された『ベニルデまたは聖母』(75)、『破滅の恋』(78)、『フランシスカ』(81)の「挫折した愛4部作」を完成。カミーロ=カステーロ・ブランコの国民的文学の映画化『破滅の恋』はフランスで絶賛される。以来、ポール・クローデル原作6時間50分の大長編『繻子の靴』(85)でも協働したプロデューサーのパウロ・ブランコと組んで、傑作を次々と世に送り出す。『カニバイシュ』(88)、『ノン、あるいは支配の虚しい栄光』(90)、『アブラハム渓谷』(93)、『階段通りの人々』(94)、『クレーヴの奥方』(99)、『家路』(01)、『永遠の語らい』(03)など。さらに100歳を前後して、『夜顔』(06)、『ブロンド娘は過激に美しく』(09)、『アンジェリカの微笑み』(10)、『家族の灯り』(12)と、旺盛に撮影を続け、2014年にはヴェネチア国際映画祭で短篇『レステロの老人』が上映された。2015年4月2日106歳で他界。

  • 主催:アテネ・フランセ文化センターAthénée Français Cultural Center
  • 共催:映画美学校The Film School of Tokyo
  • 後援:ポルトガル大使館Embassy of Portugal in Japan
    カモンイス言語国際協力機構 Camões, IP
  • 協力:シネマテカ・ポルトゲーザCinemateca Portuguesa Museu Do Cinema, IP
    東京フィルメックス TOKYO FILMex
    コミュニティシネマセンターCommunity Cinema Center
    Luxbox Films
    LEOPARDO FILMES
    Curtas Metragens – Cooperativa Produção Cultural CRL